2017年5月5日金曜日

2017年非流行語大賞発表 ~大賞は「宵越しの銭は持たない」に~

 「2017年 非流行語大賞」の審査、発表、授与式が、4月1日に宮城県の名取市にある食べ放題レストラン「すたみな二郎」にて開催された。今回の大賞は「宵越しの銭は持たない」に決まった。




 非流行語大賞は自由国民社による「新語・流行語大賞」(04年よりユーキャン新語・流行語大賞)と同じく1984年に秘密裏に創設された。その年1年間で全く用いられなくなった言葉を選び、その言葉に関わった人物、団体を顕彰する。受賞者が故人である場合は、イタコの口寄せによって現世に呼び出して表彰する。2年前は「MK5」、去年は「ろくすっぽ」が大賞に選ばれた。審査委員長は日本が大好きで口寄せが趣味のアンファッシ=ヨナブルさん(78)。「最近使われなくなった言葉も草葉の陰で生きている。それらにもう一度日の目を見てもらいたい」と賞のコンセプトを熱く話した。

 審査は審査委員長の独断と偏見で決められた宮城県内の飲食店にて行われ、審査委員長を除く審査員は飲食店内にいる客から無作為に選ばれる。客が選出を拒むことは通例禁止されている。万一拒んだ場合には、「Out of Date!! (時代遅れ!)」と大きく表示されたホログラムが1年間頭上に写され続ける。今回は筆者がヨナブルさんの許可を得て会場に潜入取材を行った。

 授与式当日、ヨナブルさんの「焼肉と寿司を安く食べ尽くしたい」という発言により、会場は「食のアミューズメントパーク」ことすたみな二郎に決定。入店すると早速ヨナブルさんは大量の肉と寿司をテーブルいっぱいに運ぶ。「やはり空腹では正しい審査ができない」とヨナブルさん。赤点スレスレな味の食材に変な音色の舌鼓を打ちつつ、ヨナブルさんは審査員選びに取り掛かる。

 ここで問題が発生する。客がヨナブルさんと筆者を含め4人しかいない。「今までの会場では少なくとも10人は必ずいた。仙台市一番町のロイヤルホストにすればよかった」と、ヨナブルさんは後悔を顔ににじませる。仕方なくヨナブルさんは2人組の客を審査員に設定。審査内容を説明する最中「意味が分からない」と警察を呼ばれそうになるものの、前述のホログラムの脅しにより勧誘に成功した。

 今回審査員となったのはアサファ・パウエルさん(34)とヒルファ・パウエルさん(7)親子である。「親子そろって顔が立川談志にそっくりだから、まさかジャマイカ人とは思わなかった」。度重なる誤算にヨナブルさんは肩を落とす。

 例年では過去の流行語や死語が候補として挙がる。しかし今回の審査員はヨナブルさんとジャマイカ人2人。日本にあまり詳しくないパウエル親子は「ドラえもん」「アパッチ野球団」などの月並みな言葉しか出てこない。

 「何かありませんか」。ヨナブルさんは苦悶の表情を浮かべて筆者を見た。「『江戸っ子は宵越しの銭は持たない』って、もう聞かないですよね」。大賞が決まった。

 かくして、ヨナブルさんの口寄せによって現代に現れた水道橋在住の江戸っ子(31)が大賞を受賞した。江戸っ子は「てやんでい! あたぼうよ」と顔をほころばせた。来年の会場は東北大学川内キャンパス内の食堂。どの食堂かはヨナブルさんの気分で決まる。

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